全国大会・老健医療研究会共催シンポジウム レポート
(第4回老健医療研究会)
全国大会・老健医療研究会が初の共催シンポジウムを開催
■各職種に共通する「感染症対策」をテーマに
老健医療研究会は、老健施設における医療のあり方等に関する学術的・専門的な研究発表を目的に、第18回全国介護老人保健施設大会愛知の際に発足した。過去3 回は全国大会の初日に単独で開催していたが、今回初めて、全国大会との共催シンポジウムを開いた。テーマは「老健施設の感染症対策」で、3 名のエキスパートが順に登壇して講演し、フロアの参加者との活発なやり取りを交えながらプログラムは進行した。
開催にあたり、司会の江澤和彦老健医療研究会幹事は、「本日は全国大会と老健医療研究会による初めての共催シンポジウムとして、各専門職がディスカッションしやすい感染対策のテーマを選んだ。積極的な意見交換や質問などを期待したい」と述べた。
■手洗いの励行やワクチン接種など改めて感染症対策の徹底を
まずトップバッターとして岸本寿男岡山県環境保健センター所長が壇上に立ち、「インフルエンザと感染性胃腸炎」について講演した。
岸本氏は、①平成21年からの新型インフルエンザパンデミックの総括と今後の対策、②老健施設でのインフルエンザ対策、③冬場に多い感染性胃腸炎(特にノロウイルス感染症)の対策――について話した。
岸本氏は、「インフルエンザの予防法を改めて思い起こしてほしい。すなわち十分な睡眠・休養を取り、部屋を暖めて加湿し、人混みはできるだけ避ける。さらにインフルエンザワクチンを早目に接種すること、咳エチケットを徹底することも大事だ。そして昨年はインフルエンザの予防のための手洗いが広く励行され、ノロウイルスをはじめとする感染性胃腸炎も非常に少なかった。石けん等を利用したこまめな手洗いという基本中の基本をもう一度徹底してほしい」と述べた。
つづいて、大石和徳大阪大学微生物病研究所感染症国際研究センター臨床感染症学研究グループ特任教授が登壇し、「肺炎予防」をテーマに発表を行った。
大石氏は、「高齢者は肺炎の罹患率が非常に高く、その原因となるインフルエンザ後の二次性肺炎、誤嚥性肺炎には特に注意してほしい。肺炎の予防では、手洗いの励行、口腔ケアの徹底、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨される」と指摘。そして23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)について、従来は有意な肺炎リスクの低下が証明されていなかったが、最近の調査では、75歳以上の高齢者の肺炎エピソードおよび肺炎による入院頻度を低下させ、65歳以上の高齢者の肺炎による医療費削減効果が見られるとし、「少なくとも75歳以上の高齢者の肺炎予防として23価PPVを推奨できる」と説明した。
最後に、渡邉都貴子岡山大学病院看護部・感染制御部感染管理担当師長(感染管理認定看護師)が、「老健施設における感染対策」と題して講演した。このなかで渡邉氏は、高齢者の感染を考えるうえでは、①加齢による変化は、感染リスクにかかわる身体の主なシステムの変化を伴う、②感染リスクとなる侵襲的器具や薬剤の使用が増加する、③施設への入院・入所は病原体の伝播を受ける可能性を増し、多剤耐性菌のアウトブレイクに関与することもある、④糖尿病・神経疾患・脳血管疾患などの感染リスクを高める基礎疾患を持っている、⑤高齢者に多い栄養不足は細胞性免疫を低下させる、⑥高齢者には罹患率・死亡率を低下させるためのワクチン接種が重要――などをポイントに挙げた。
そして「地域の医療・介護の機能分化・連携が進むなかでは、患者・利用者は各施設を移動していく。そのため、もはや一施設だけで感染管理を徹底するのは難しく、地域で連携して対応していかなければならない」と強調した。
その後、会場からは尿路感染症や肺炎球菌ワクチン、ノロウイルス、インフルエンザなどに関する質問が相次ぎ、予定の時間を20分あまりオーバーして活発な質疑応答が行われた。
機関誌『老健』平成23年2月号掲載